荒川慎太郎・澤本光弘・高井康典行・渡辺健哉編『契丹[遼]と10~12世紀の東ユーラシア』(勉誠出版、2013年1月)
勉誠出版のアジア遊学160。契丹研究の最前線が凝縮されていて魅力満載。契丹の多様な国際関係にはじまり、契丹の出版文化・仏教・官制・都城、契丹文字、考古成果、契丹滅亡後の契丹人とその記憶、などなどテーマは幅広く、さまざまな角度から契丹を知ることができる。
荒川論文が紹介しているロシアで見つかった契丹大字写本は、15000字前後と目されており、内容も仏典や漢語古典ではなく、契丹の史的事実に言及している可能性があるらしい。解読が進めば、契丹文字・契丹語・契丹史の研究が飛躍的に進むことは間違いない。さらにカラキタイ領域の遺跡から出土した可能性が高いことから、これまで空白だったカラキタイ(西遼)の研究が進展するかもしれない。
目次は以下の通り。
一:契丹[遼]とその国際関係
古松崇志「十~十二世紀における契丹の興亡とユーラシア東方の国際情勢」
高井康典行「世界史の中で契丹[遼]史をいかに位置づけるか―いくつかの可能性」
山崎覚士「五代十国史と契丹」
毛利英介「澶淵の盟について―盟約から見る契丹と北宋の関係」
松井太「契丹とウイグルの関係」
【コラム】赤羽目匡由「契丹と渤海との関係」
二:契丹[遼]の社会・文化
磯部彰「遼帝国の出版文化と東アジア」
藤原崇人「草海の仏教王国―石刻・仏塔文物に見る契丹の仏教」
澤本光弘「『神宗皇帝即位使遼語録』の概要と成立過程」
武田和哉「契丹国(遼朝)の北面官制とその歴史的変質」
高橋学而「遼中京大定府の成立―管轄下の州県城から」
【コラム】弓場紀知「日本に伝わる契丹の陶磁器―契丹陶磁器の研究史的観点を中心にして」
【コラム】阿南ヴァージニア史代・渡辺健哉「遼南京の仏教文化雑記」
三:契丹研究の新展開―近年の新出資料から
武内康則「最新の研究からわかる契丹文字の姿」
呉英喆「中国新出の契丹文字資料」
荒川慎太郎「ロシア所蔵契丹大字写本冊子について」
【コラム】松川節「契丹文字の新資料」
白石典之「ゴビ砂漠における契丹系文化の遺跡」
臼杵勲「チントルゴイ城址と周辺遺跡」
董新林「遼祖陵陵園遺跡の考古学的新発見と研究」
【展覧会記録】市元塁「契丹の遺宝は何を伝えるか―草原の王朝契丹展の現場から」
四:その後の契丹[遼]
飯山知保「遼の〝漢人〟遺民のその後」
松浦智子「明代小説にみえる契丹―楊家将演義から」
水盛涼一「清人のみた契丹」
【博物館紹介】石尾和仁「徳島県立鳥居龍蔵記念博物館」
【コラム】河内春人「フランス・シノロジーと契丹」
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