金文京『漢文と東アジア―訓読の文化圏』(岩波新書、2010年8月)
日本のみならず、朝鮮や中国周辺諸民族の訓読現象について紹介し、
東アジアを、「漢字」文化圏ではなく、「漢文」文化圏として
捉えなおすことを提唱している。
第一章では、日本の訓読について通史的に述べ、
漢訳仏典が訓読のヒントになった可能性を指摘している。
第二章では、朝鮮半島の訓読について、かなり詳細に紹介し、
近年明らかになってきた朝鮮訓読と日本訓読の関係性を論じている。
また、契丹やウイグル、ヴェトナムの訓読現象を紹介し、
さらには現代中国語における訓読現象にも言及している。
第三章は変体漢文を取り上げている。
日本以外の地域の訓読現象を詳細に紹介していて興味深い。
契丹語まじりの漢詩は、はじめて見た。
また、新羅の変体漢文に言及する際に、
「中国南北朝時代の北朝系の漢文」との類似性を指摘している(198頁)。
蛇足ながら、注に引かれている小川環樹「稲荷山古墳の鉄剣銘と太安万侶の墓誌の漢文におけるKoreanismについて」(『小川環樹著作集』第五巻、筑摩書房、1997年)は、北朝の墓誌などにみえる変体漢文(鮮卑語の影響)について論じていて、もう少し注目されていい論文だと思う。
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